ゆっくりしっかり再建を……北海道夕張市について

2023.10.23 その他

皆さんは「北海道の夕張市」と聞くと、どのような印象を浮かべるでしょうか？
一時期までならば「夕張メロン」や「炭鉱アミューズメント」などがあったものですが、やはり近年であれば「財政破綻した都市」という印象が強いかと思います。

「倒産」してしまった街、夕張

夕張市が財政破綻したのは2007年、この記事執筆時点から16年前になります。
かつては石炭の炭鉱が有名な都市で、1990年にすべての炭鉱が閉山するまでは、北海道の炭鉱の中心地でした。
また、気温の寒暖差が大きいという特徴を活かしてメロン栽培にも力を入れており、「夕張メロン」といえばかなりのブランドものであった、という事はご存じの方も多いかと思います。その「夕張メロン」が始まったのはなんと1961年。すでに60年以上の歴史があるものなのです。

しかし、先に書いた通り炭鉱は1990年にすべて閉山、元々「炭鉱の町」として移住を進めていた事もあり、本来は農業に向いた地域のない都市でした。結果として若年層は夕張を出て都市圏、札幌や旭川などに出ることとなり、一気に高齢化が進行。同時に人口減少にも歯止めがかからず、さらには財政面でも様々な問題が出たことから、元々1960年代をピークに減少傾向だった人口減少がさらに加速、結果として2007年に「財政再生団体」に指定され、事実上の経済破綻を迎えることとなったのです。

それ以降の夕張については、残念ながら皆さんの想像する通りの街並みで、まさに「廃墟」という言葉が当てはまってしまうような風景。皮肉なことに山の自然は活気を取り戻したようで、綺麗な山並みと廃墟のような街が並ぶという景色が広がっています。

それでも……再び立ち上がろうと力を注ぐ映画産業

さて、そんな夕張ですが、当然ながら何もせずにいるわけではありません。財政の健全化を進めると同時に、少しずつ、着実に観光都市へとシフトすべく、様々な施設や建造物をビューポイントにして、かつてのような活気を取り戻すべく尽力されているようです。

1977年に公開された「幸せの黄色いハンカチ」という映画はご存じでしょうか。既に45年も前の映画になるので、現在18歳までの方はもちろん、30代の方でも知らない、もしくは見たことがないという方は多いかと思います。

ただ、タイトルにもなっている「黄色いハンカチ」は「幸せ」の象徴としてわかりやすいシンボルとして、この風景を中心に同映画の「聖地」である一帯にカフェや、映画で使用された小道具などの展示が行われています。映画の題材の通り、「幸せとは何か」を想起させるような場所を用意し、静かな夕張の中でゆったりとそうした空気に浸ることができるようになっています。

また、映画との繋がりは本作のみにとどまらず、「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」と銘打った映画祭を1990年から開催。現在でも続く長い歴史を持ったイベントに成長しています。開催当時から、当時のビデオやDVD等になっていない、いわゆる「ソフト化されていない」作品が集まる場所として、視聴者側には貴重な機会を、制作者側には有力な宣伝の機会を、双方に与えることになったイベントです。元々は自治体主導で開催され、様々な賞を獲得した映画祭でしたが、やはり財政破綻に伴って継続が危ぶまれ、結果として市民による継続開催が行われる事となりました。現在は映像関連の様々なスポンサーにも恵まれ、インディーズ映画などを中心に映画ファンにとって重要な場として存在しています。

現在では地方自治体のお約束ともなった「ゆるキャラ」として「メロン熊」を展開しつつ、様々な観光関連の施設を整備したり、大きな「シューパロダム」をはじめ様々な観光スポットを展開するなど、いわゆる「経営再建」をじっくりと、しかし着実に進めているようです。元々「脱・炭鉱の町」を目指し、一度目指した観光都市でしたが、結果として一度目は失敗に終わっており、再び走り始めた「二度目の挑戦」を応援する声は多く、活気ある街に戻ることを期待している人も多いようです。

私達も、先日夕張へ遊びにいってみました。是非こちらもどうぞ。